聖地ウィンブルドンがロシアとベラルーシ選手の出場を禁止…ボイコットは起こるか
過去にはボイコットに発展した例がある。1973年の今頃、デ杯代表を拒否したユーゴスラビア(当時)のニコラ・ピリッチに対し、国際テニス連盟が資格停止処分を下した。旗揚げ直後のATPは、アーサー・アッシュを先頭に81人がウィンブルドンをボイコット。ドローがめちゃくちゃになったおかげで日本選手が5人も本戦入りした。
ただ、ウィンブルドンは公的機関ではなくAELTCという私的クラブ主催の大会で自治権を持つ。今世紀に入ってからツアーと歩調を合わせてきたものの、本来は“出たくなければご自由に”というスタンスだ。先週の選手委員会でナダル、フェデラーがツアーポイントを剥奪し公式戦と認めない方針を提案した(ジョコビッチは運営方針の違いから委員会を離れている)。
■1回戦負けでも賞金800万円
こういった選手の権利を守る最終手段に対して、しかし、選手間では否定的意見が多い。ウィンブルドンは145年の歴史を誇るテニスの玉座、まして今年の賞金は14%増の総額3990万ポンド(約64億3700万円)で、優勝賞金が3億円、1回戦負けでも800万円、ポイント剥奪の効果は期待できない。男女とも新陳代謝が進み若手はポイントも欲しいだろうが……死者50万人ともいわれたイラク戦争時にこうした措置はなかった。モスクワ五輪のボイコットからほぼ半世紀。スポーツの脱政治などきれいごとに違いないだろうが、そう突き放してしまっては元も子もない。テニスのジレンマは続く。