ウィリアムズ姉妹の父親を描いた映画「ドリームプラン」の面白さ 女子テニス低年齢化の一因も
映画を見た。邦題「ドリームプラン」の原題は「キング・リチャード」。女子テニスのスーパー姉妹、セレーナとビーナスの父親、リチャード・ウィリアムズの物語だ。
米国では昨秋の公開時から話題だったが、日本では主演ウィル・スミスがアカデミー賞授賞式の会場でプレゼンターに平手打ちを食らわせた衝撃ばかりで、映画自体はさほど話題にならなかった。それも仕方がない。2つのテーマはかなりアメリカ的だ。
黒人姉妹は米国西海岸の危ない地域の出身。近代スポーツ全般にいえることだが、特にテニスやゴルフのクラブスポーツは社交の場で、人種差別が根強く存在する。さらにリチャードは女子テニスの特殊性とも闘った。
テニスの賞金が男女同額ということは周知の通りだが、普及面に格段の差がある。競争率は違っても対価は同じ──1980年代のプロ化に並行して女子テニスの低年齢化が劇的に進んだ理由である。
グラフのデビューは13歳、セレシュが15歳で全仏4強入りし、カプリアティの全仏4強に米国が驚喜したのが14歳だった90年のこと。未成年者がたちまち100万ドルを手にし、燃え尽き症候群、非行などの問題が起こった背景に歪みがあったのは確かだろう。