「若い頃は軽い方がいい」宇良の復活に重なる栃木山の育成論

公開日: 更新日:

大きくても動ける力士になる

 元横綱栃ノ海の花田茂広さんから、生前、師匠・元横綱栃木山の言葉を聞いた。

「若い頃は軽い方がいい。大きな相手に何とか勝とうと技やスピードが身につく。それから大きくなると、覚えたものは体が忘れないから、大きくても動けて技のある力士になる」

 かつての名力士には、若い頃に細かった人が少なくない。栃ノ海は小兵のままだったが、春日野部屋を起こした師匠の教えを受け、名人横綱と呼ばれた。小兵でも、まず当たり、おっつけて出る。多彩な技はその後に。これも春日野部屋の伝統。

 部屋は違っても、力士発掘・育成の妙を語る至言が、けがをした宇良に重ねると、なお深く聞こえる。もともと宇良には、小兵でも当たって出る形があった。半面、業師といってもアクロバチックな技が多い。無理な体勢でも残れてしまうからなのか、ひやひやさせる。

 珍手・奇手は見て楽しいが、宇良が手に入れた体重に合う自分の相撲を、どう見極め、磨いていくか、じっくり見守るのもいい。

▽若林哲治(わかばやし・てつじ)1959年生まれ。時事通信社で主に大相撲を担当。2008年から時事ドットコムでコラム「土俵百景」を連載中。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    藤原竜也「全領域異常解決室」に「SPEC」ファンから“追い風”! 演技派・柿澤勇人の伸びしろにも期待大

  2. 2

    どうなる?「トリガー条項」…ガソリン補助金で6兆円も投じながら5000億円の税収減に難色の意味不明

  3. 3

    二宮和也が「ブラックペアン」続編を退所後の初仕事に選んだウラに“子供のお受験”問題

  4. 4

    ダルビッシュの根底にある不屈の反骨精神 “強いチームで勝ちたい大谷”との決定的な違い

  5. 5

    米女子ツアー「崖っぷち3人娘」はどうなる? 次戦でシード選手と最終戦出場者が確定

  1. 6

    ソフトB悪夢の本拠地3連敗「2つの敗因」…26イニング連続無得点よりも深刻なチーム事情

  2. 7

    竹内涼真「龍が如く」は酷評の嵐…実写化ドラマ“改悪”続出で、いよいよNetflix一強時代へ

  3. 8

    いまや大谷ドジャースこそ「悪の帝国」だ…カネ&人気&裏技フル活用でタンパリング疑惑まで

  4. 9

    大谷翔平を激怒させたフジテレビと日本テレビ…もっと問題なのは、情けない関係修復の仕方だ

  5. 10

    佐々木朗希の獲得に「第3の球団」急浮上…来春日本開幕でvs大谷ドジャースの可能性