千代の富士の横綱像とウルフスペシャルの由来「勝って騒がれる横綱になろう」

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北の湖は「憎たらしいほど強い」と言われ…

 ファンが横綱に送る視線はさまざまだ。大鵬は強すぎて館内に空席ができた。「巨人、大鵬、卵焼き」は子どもの好み。

 北の湖は「憎たらしいほど強い」と言われ、「負けた時だけニュースになるから、子どもが学校で『おまえの父ちゃん弱いんだな』とからかわれた」そうだ。千代の富士は時代のバトンを受け継いだ北の湖を見て、自分なりの横綱像を描いた。

 貴乃花は勝つも負けるも大スター。朝青龍は悪役ぶりに支持者とアンチが半ばした。白鵬(現・宮城野親方)は不祥事続きの時期に頼りにされたが、後年はよく問題を起こし、負けて飛ぶ座布団の意味が北の湖と違った。

 照ノ富士はさしずめ、ファンが祈る横綱か。奇跡的な復活、圧倒的な実力、横綱としての責任感を絶賛しつつ、体調を祈るように見守っている。

 秋場所はついに途中休場した。膝は手術を受ける可能性もあるようだ。16日の横綱昇進披露宴では「横綱としてどう生きていくか、これからも勉強して頑張っていきたい」とあいさつしたが、いずれ来る引退の後にも人生がある。あまり無理はしないでと祈る人もまた、多いことだろう。

▽若林哲治(わかばやし・てつじ)1959年生まれ。時事通信社で主に大相撲を担当。2008年から時事ドットコムでコラム「土俵百景」を連載中。

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