「地名の楽しみ」今尾恵介著
地名の奥深い世界を解説したコラム集。
河岸段丘の崖を昔の人は「ハケ」や「ママ」と呼んだ。漢字伝来以前からそう呼ばれたため、多摩川沿いの羽ケ下(羽村市)や、八ケ下(日野市)などのようにさまざまな字が当てられた。一方、上と下がペアになった地名は、「京都に近い方に上の字をつけた」と思われがちだが、実際は同じ流域の上流側か下流側(標高の上下)の違いだという。その他、粕壁と表記されていた地名が春日部(埼玉県)に改められた背景や、江戸時代に駕籠を作る職人が集まっていたという神田北乗物町など職業にまつわる地名など、その由来を読み解くだけでなく、近代以降の変遷や地名の構造まで幅広く教授。(筑摩書房 860円+税)