「終わりなき道」ジョン・ハート著 東野さやか訳
すべてが傑作、という作家はめったにいない。どんなに素晴らしい作家でも、やややと思う作品があったりする。ところが中には例外もあって、それが今回紹介するジョン・ハート。これまで翻訳された「キングの死」「川は静かに流れ」「ラスト・チャイルド」「アイアン・ハウス」の4作すべてが傑作だからすごい。とんでもない作家である。この4作に共通するのは、すべてが秀逸なミステリーであることと、胸に残る家族小説であることだ。ミステリーと家族小説がお好きな方はぜひチェックされたい。
今度の「終わりなき道」も、これまでのジョン・ハートの諸作と同様に、ミステリーであると同時に家族小説だ。ホントにうまい。
主人公は刑事のエリザベス。少女監禁犯を拷問の果てに射殺したとして、州警察の調査の対象になっている。「拷問の果てに射殺」とは何なのか。それがどういう状況であったのか。それは読者になかなか明かされない。エリザベスが語ろうとしないからだ。
もうひとつは、エリザベスの元同僚エイドリアン。彼はある女性を殺した罪で服役していたのだが、何も語らず釈放されたあとも寡黙なまま。この2人の過去が、ゆっくりと静かに立ち上ってくる。どうしてこれが家族小説であるのかは、ストーリーに絡むことなのでここに書けない。とてもすてきなラストまで一気読みの傑作であると書くにとどめておく。未読の方は前4作も続けて読まれたい。(早川書房 2100円+税)