「日本のヤバい女の子」はらだ有彩著

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 昔話を換骨奪胎したものとしては、太宰治の「お伽草紙」が有名だが、昔話というのはよく読んでみると、ツッコミどころが多いことがわかる。たとえば福沢諭吉は「桃太郎」に対して、鬼ケ島から財宝を奪ってきたのは卑劣な行為だと批判している。本書は、昔話に登場する女性に的を絞り、彼女たちに背負わされてきた「果たすべき役割」から解き放ち、その「素顔」をのぞいてみようというユニークな試みだ。

 ベテラン大工の夫が寺の工事で誤った寸法で木を切ってしまった。途方に暮れる夫に素晴らしいアイデアで救ったのは女房のおかめ。ところが、それがおかめのアイデアと知れたら夫の名誉に傷が付く。そう思った彼女は、自害してしまう。でも、おかめは本当に死ぬ必要があったのか? もし現代だったら、アイデアを出したおかめが評価され、ザハ・ハディドと並ぶ女性建築家になったかも知れない。

 あるいは、夫婦になるという約束を破った安珍を追い詰め、鐘の中に隠れた安珍を大蛇に化身して焼き尽くした清姫。ストーカーまがいながらも、裏切られたことで尋常ならぬ力を得た清姫は、その力を糧に、安珍なんぞの情けない男に見切りをつけて、新たな道を歩むこともできたのでは?

 といった具合に、うぐいす女房、虫愛づる姫君、イザナミノミコト、かぐや姫、八尾比丘尼、乙姫、皿屋敷お菊、鉢かづき姫、織姫といった、総勢20人の「ヤバい」(無論プラス評価としての)女の子(動物・幽霊も含む)たちを物語の世界から引っ張り出して、その思いの丈を代弁したり現代女性に引き比べたりと、自在に論じていく。

 著者の筆になるキャリアウーマン風のおかめ、ボクサースタイルのイザナミといったイラストレーションもヤバくて、イケてる。

<狸>

(柏書房 1400円+税)

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