「禁じられたメス」久間十義著
泌尿器科医の東子は、上司との不倫が原因で夫と離婚、愛娘の親権まで剥奪されてしまう。時を同じくして東子を女手一つで育ててくれた母が急死。すべてを失った東子は、宮城県・伊達湊市の総合病院で働き始める。
2週間後、腎移植の手術のため、部長の陸奥のもとに県下の病院から医師らが集まる。見学した東子は、陸奥らの卓越した技術に驚かされる。聞くと、陸奥は米国で修業し、帰国を惜しまれたほどの名医だった。数カ月後、東子はある出来事をきっかけに生まれ変わったつもりで陸奥から技術を学ぶことを決意。その直後、陸奥らが倫理的に問題がある病気腎の移植を手掛けていることを知る。
現実の事件をモデルに医療倫理と患者の命とのはざまで奮闘する女医を描く長編小説。
(新潮社 840円+税)