「酒好き肝臓専門医が教える カラダにいい飲み方」栗原毅著
酒といえば、たばこと並んで健康を害する2大悪玉として扱われてきた。しかし、酒に限っては適量ならば害でなく、むしろ健康にいいと太鼓判を押すのが肝臓専門医である著者だ。
米国保健科学協議会による研究報告では、酒をまったく飲まない人に比べて適量の飲酒を習慣にする人は死亡率が下がることが明らかになっている。もちろん、飲みすぎの状態になれば死亡率は上昇する。このグラフの形状から、「Jカーブ効果」と呼ばれているデータだ。
日本でも大規模な疫学追跡調査(コホート研究)が行われている。その結果、酒を飲まない人よりも厚生労働省が推奨する1日の純アルコール基準値20グラムから許容量の40グラムを摂取している人の方が、がんや心血管疾患のリスクが低いことが分かっている。20グラムのアルコールといえば、ビールなら500ミリリットル、日本酒なら1合、焼酎なら0・6合といった具合。適量さえ守れば、休肝日も不要だと著者は解説する。
とはいえ、酒の量と同様に大切なのが「飲み方」である。適量を守っても、一気飲みなどをしてしまえばアルコールを代謝する肝臓にダメージを与える。また肝臓は糖の代謝も担うため、ご飯ものやポテトサラダ、焼きそばやピザなど糖質の多いつまみを選ぶと負担が倍になってしまう。
そこで本書では、肝臓に優しい飲み方を提案。ビールはジョッキではなく、小さなコップにつぎながら飲める瓶を選ぶ、アルコールの分解に消費されるビタミンBをたっぷり取るべく、つまみは豚肉やサバ、チーズなどを選ぶなど、すぐに実行できそうな工夫が満載だ。
酒を良薬とする知識を身につけておけば、人生最後の日までおいしく飲めるのだ。
(フォレスト出版 900円+税)