「黄色い夜」宮内悠介著
ルイは深夜のバススタンドで、イタリア人のピアッサと知り合いになった。5ドル札を挟んだパスポートを見せて国境を越え、バスでエチオピアから独立したE国に入る。石油は産出せず、作物も育たず、産業はカジノだけだ。
ピアッサが「ひどい国だな」と言うと、ルイは「じきにそうじゃなくなる」と返した。
「ぼくがE国を乗っ取るからさ」
首都には、らせん状の塔がそびえている。下層階のカジノは庶民用で、階が上がるにつれて賭け金が上がり、最上階では上限がない。世界ランクの富豪が最上階の87階で賭けに勝ったら、E国は彼のものになる。人を蘇らせる国を求める男がたどり着いた、奇妙なギャンブル王国の物語。
(集英社 1500円+税)