「世界 夢の映画旅行」映画選定:Filmarks/パイ インターナショナル編著

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 映画観賞の楽しみのひとつは、舞台となった異国の知らない街や場所、見たこともない風景に触れられることだ。

 本書は、映画に登場するそうした風景や、ロケが行われた街など、名画の世界観が凝縮した各地のスポットを紹介するビジュアルガイド。

「ロマンチックな旅」と題された章では、うっとりとするほど美しい情景や都市のきらびやかな風景にときめく映画を取り上げる。

 そのひとつ、「her/世界でひとつの彼女」は近未来のアメリカ・ロサンゼルスを舞台に、妻と別れたショックから立ち直れなかった男が、人格を持つ人工知能型OSサマンサに本気で恋をするという物語。海辺での“デート”シーンに登場する西海岸のイメージをそのまま再現したかのような美しいマンハッタンビーチが紹介される。

 同じくロサンゼルスの街並みを見渡すグリフィス天文台のある公園では「ラ・ラ・ランド」の象徴的な場面である2人が丘上で踊り合うシーンが撮影された。この壮大なランドマークは、「理由なき反抗」や「ターミネーター」など往年の名作のロケ地としても有名だという。

 他にも、父親を知らずに育った少女が、母親の日記に書かれていた3人の父親候補を結婚式に招くロマンチック・コメディー・ミュージカル「マンマ・ミーア!」の舞台となったギリシャのスコペロス島や、17歳の少年と24歳の青年の切ない恋を描く「君の名前で僕を呼んで」で、主人公の一家がひと夏を過ごす避暑地のクレマ(写真①)をはじめ、シルミオーネなど北イタリアの美しい街や豊かな自然など、1つの映画で紹介される写真は2、3枚ほどなのだが、そのとびっきりの景色や街並みにすぐにでも映画を見てみたくなる。

 続く「ノスタルジックな旅」の章では、子供時代の思い出や青春の甘酸っぱさに浸れる映画が登場する。

 公式な発表はないが、あの「天空の城ラピュタ」のモデルとなったといわれる土地のひとつがイギリスのウェールズ地方だ(写真②)。

 また架空の都市・旧ズブロフカ共和国で栄華を誇った名門ホテルを舞台に繰り広げられるサスペンス&コメディー「グランド・ブダペスト・ホテル」のモデルとなったチェコの高級ホテル「グランドホテル パップ」とメインの撮影が行われた中世の街並みがそのまま残るドイツの田舎町ゲルリッツ(写真③)、「ハリー・ポッター」シリーズの「ホグワーツ魔法魔術学校」の長い食卓のモデルとなったイギリス・オックスフォード大学のグレート・ホールなども巡る。

 さらに、異世界をのぞき込んだ気分になれる「エキゾチックな旅」の章、そして「スリリングな旅」の章の4つのカテゴリーで、不朽の名作から話題の近作まで全55作品を取り上げる。

 名画のガイドブックとしても読める一方で、何よりも外出もままならぬ今、映画を手掛かりに世界各地へ空想旅行に導いてくれるタイムリーな好企画。

(パイ インターナショナル 1850円+税)

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