下重暁子(作家)

公開日: 更新日:

5月×日 1月に書下ろしの新書「明日死んでもいいための44のレッスン」(幻冬舎 924円)が出て以来、続けざまに1、2ヵ月に1冊の割合で拙著が本屋に並ぶ。それを見て「忙しいでしょう?」といわれるが、たまたま連載していたものがまとまる時期が重なっていたためで、本人はしごくのんびりとコロナの休みを読書三昧で過ごしている。

 ただ日頃あまり手に取ることのない分野では、「新書大賞2021」1位の「人新世の『資本論』」(集英社 1122円)を読んで、すっかりはまってしまった。斎藤幸平さんという若い社会学者のこの本が、ベストセラーになり多くの人々に今読まれているのは何故か。

 ピケティなどの経済学者が、しばらく前から資本主義の限界に警鐘を鳴らし、マルクスの資本論に救いを見出そうとしているが、斎藤さんも新しい感覚で、マルクスの資本論を解釈する。それがストンと腑に落ちた。地球温暖化、3・11、コロナ…。

 資本主義によって人間の欲望が地球を、自然を蝕んで、ある日重層的に終わりが来る。それを避けるための方法はあるのか。納得がいったのだ。

 この上は、基本になるマルクスの資本論をしっかりと読み返すしかない。夏中に。大月書店で全9冊、読めるかなあ?

6月×日 子どもの頃、結核で2年寝ていたから、一人遊びは馴れたもの、孤独は大切な友達だからこの時期退屈することはない。

 ただ旅に行けないのが困る。人が働いているとき、羽田や成田から飛び立って、下界を見下ろし、「ざまあみろ、浮世のバカは起きて働く」などとうそぶくときの快感! 旅の本をめくっていて好みにぴったりはまったのがヤマザキマリ著「ヤマザキマリの世界逍遥録」(KADOKAWA 1430円)。パルミラ、ペトラなどの遺跡、シシリアやキューバなどの人の暮らし、アマゾンなどの自然! イタリアと日本を股にかけ世界各地を歩く売れっ子漫画家だ。こんな自由で素敵な女性が出てきた。先駆者は兼高かおるの「世界の旅」。日本旅行作家協会で今年第1回の兼高かおる賞受賞者に選んでよかった。

【連載】週間読書日記

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    菊川怜の元夫は会社が業績悪化、株価低迷で離婚とダブルで手痛い状況に…資産は400億円もない?

  2. 2

    粗製乱造のドラマ界は要リストラ!「坂の上の雲」「カムカムエヴリバディ」再放送を見て痛感

  3. 3

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  4. 4

    綾瀬はるか"深田恭子の悲劇"の二の舞か? 高畑充希&岡田将生の電撃婚で"ジェシーとの恋"は…

  5. 5

    斎藤元彦知事ヤバい体質また露呈! SNS戦略めぐる公選法違反「釈明の墓穴」…PR会社タダ働きでも消えない買収疑惑

  1. 6

    渡辺裕之さんにふりかかった「老年性うつ」の正体…死因への影響が報じられる

  2. 7

    水卜ちゃんも神田愛花も、小室瑛莉子も…情報番組MC女子アナ次々ダウンの複雑事情

  3. 8

    《小久保、阿部は納得できるのか》DeNA三浦監督の初受賞で球界最高栄誉「正力賞」に疑問噴出

  4. 9

    菊川怜は資産400億円経営者と7年で離婚…女優が成功者の「トロフィーワイフ」を演じきれない理由 夫婦問題評論家が解説

  5. 10

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”