「他者の靴を履く」ブレイディみかこ著

公開日: 更新日:

 本書は、ベストセラー「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」の中に登場した「エンパシー」という言葉をきっかけに生まれたエンパシーの考察本。著者の息子が、テストで「エンパシーとは他者の靴を履いてみること」と答えた前著の場面に対する反響が大きかったことに驚いた著者は、安易なエンパシー論になりがちな風潮に対して、もっと掘り下げた議論があることを紹介しながら自身の思考を丹念に追っていく。

 エンパシー(他者の感情や経験を理解する能力)は、シンパシー(共感)と混同されがちだが、エンパシーは能力として身につけるものであり、シンパシーは感情など自身から湧いてくるものである点が違う。鉄の女・サッチャーが「シンパシーはあったがエンパシーがなかった人」として紹介されているほか、福祉や教育の予算を政府が削り続けている状況下で「政府にも苦しい財政事情があるのだから」と庶民がエンパシーを発揮し過ぎて自分の靴を捨てて従順になり、従わない人には自警団のような形で攻撃したりすることをエンパシーの闇落ちとして指摘しているのも興味深い。 (文藝春秋 1595円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    都知事選2位の石丸伸二氏に熱狂する若者たちの姿。学ばないなあ、我々は…

  2. 2

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  3. 3

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 4

    竹内涼真“完全復活”の裏に元カノ吉谷彩子の幸せな新婚生活…「ブラックペアン2」でも存在感

  5. 5

    竹内涼真の“元カノ”が本格復帰 2人をつなぐ大物Pの存在が

  1. 6

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  2. 7

    二宮和也&山田涼介「身長活かした演技」大好評…その一方で木村拓哉“サバ読み疑惑”再燃

  3. 8

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  4. 9

    小池都知事が3選早々まさかの「失職」危機…元側近・若狭勝弁護士が指摘する“刑事責任”とは

  5. 10

    岩永洋昭の「純烈」脱退は苛烈スケジュールにあり “不仲”ではないと言い切れる