「信長、鉄砲で君臨する」門井慶喜著

公開日: 更新日:

 時は天文12年。種子島の南端に一隻の船が現れた。船から下りてきたのは見たこともない南蛮の商人。種子島の領主・種子島時堯に鉄砲を売りたいというのだ。

 人を殺すことができる新しい武器に興味を持った時堯は、商人から2丁の鉄砲を手に入れた。1丁は島内西ノ村の村長・織部に渡して鉄砲の製造を命じたものの、もう1丁は紀伊国根来寺の杉ノ坊という僧に半ば脅されるようにして持っていかれてしまった。那古野に城を与えられたばかりの吉法師こと将来の織田信長は、この根来寺で鉄砲に出合い、弓と刀の戦いから脱却した鉄砲を使った天下取りを確信するのだが……。

 本書は「家康、江戸を建てる」の著者による最新作。戦国時代の勢力図を一気に変えた鉄砲の出現を巡って、西洋文明と初めて対峙した種子島といち早く鉄砲製造へと動いた根来寺の役割、新奇な武器に魅了され新たな戦法と銃に適した築城をも編み出した信長の先見性が描かれる。

 当初、ほかの武士からは蔑まれた鉄砲を、乱世を制する強力な武器として信長が巧みに利用したことで、日本が大きな転換期を迎える様子が興味深い。

(祥伝社 1980円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元グラドルだけじゃない!国民民主党・玉木雄一郎代表の政治生命を握る「もう一人の女」

  2. 2

    深田恭子「浮気破局」の深層…自らマリー・アントワネット生まれ変わり説も唱える“お姫様”気質

  3. 3

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”

  4. 4

    粗製乱造のドラマ界は要リストラ!「坂の上の雲」「カムカムエヴリバディ」再放送を見て痛感

  5. 5

    東原亜希は「離婚しません」と堂々発言…佐々木希、仲間由紀恵ら“サレ妻”が不倫夫を捨てなかったワケ

  1. 6

    綾瀬はるか"深田恭子の悲劇"の二の舞か? 高畑充希&岡田将生の電撃婚で"ジェシーとの恋"は…

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    “令和の米騒動”は収束も…専門家が断言「コメを安く買える時代」が終わったワケ

  4. 9

    長澤まさみ&綾瀬はるか"共演NG説"を根底から覆す三谷幸喜監督の証言 2人をつないだ「ハンバーガー」

  5. 10

    東原亜希は"再構築"アピールも…井上康生の冴えぬ顔に心配される「夫婦関係」