「近代おんな列伝」石井妙子著
「近代おんな列伝」石井妙子著
高場乱(たかばおさむ)は1831年、福岡藩医、高場正山の次女として生まれた。乱の資質を認めて、正山は医学と漢学を教え、藩に男子として届けを出して10歳で元服させ、帯刀、男装の許可を得た。乱は医院に興志塾を併設、型にはまらない生き方を奨励する。
塾生のひとり、頭山満は後に玄洋社を設立、「アジア主義」を提唱した。それは当時、アジアから搾取していた欧米諸国に対抗して、東洋的な価値観を共有するアジアの連帯を目指すもので、乱もこれを支持した。
ほかに、15歳で明治天皇の皇后(後の昭憲皇太后)に漢籍を進講し、後に自由民権運動家として男女同権を訴えた岸田俊子(中島湘烟)など、近代に活躍した36人の女性を紹介する。 (文藝春秋 1980円)