赤塚不二夫<後編>笑いを生み出す力の裏には“悲劇的体験”
ある大手出版社の新人賞の発表会でのこと。発表会の開始は午後3時ごろの予定だった。赤塚さんは若手社員をチョイチョイと手で呼び、
「あのオチャケちょうだい」
Aさんがウイスキーの水割りを手渡すと、赤塚さんは満足そうにグビリと飲みはじめた。
待ち時間に合計5杯の水割りを飲んだという赤塚さんは会場で気持ちよくなって舟をこぎ始めた。肝心な最優秀賞のプレゼンテーターの役目が回ってきて、担当の新人社員が、
「先生、発表です」
と起こすと、赤塚さんは突然ビシッと立ち、プレゼンター席で賞を授与する前にこう言ったそうである。
「最近、漫画雑誌を見ていると似たような漫画が多い。実に嘆かわしい。今日この会場で言いたいことはひとつ『人の真似はするな!』はい、以上」
と実に重い一言を発した。コピペ文化花盛りの今から見ると、自分独自の表現活動をしている作り手が各方面どれだけいるのだろうか? と思う。