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松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

「愛の告白をする時に原稿を読む人はいません」と石破さん たまらないではないか

公開日: 更新日:

 さて、ぼくは夏の参院選期間中に軽い気持ちで“超党派ドリームチーム”を夢想中とツイートした。それを面白がったのが「サンデー毎日」編集部。“チーム”の筆頭的存在である自民党石破茂議員との初対談を企画、実現させた。ドリームチームの選抜条件は「自分の言葉で語る、説得力に満ちた政治家」。対談のテーマが「政治と言葉」になったのも自然なことだった。詳しくは発売中の同誌を読んでいただくとして、ここでは同誌記事からはこぼれたが、ぼくが最も心を掴まれた話を紹介したい。

 鳥取県知事の息子だった石破さんは、中学時代のほぼ毎日、ひとり自転車に乗って有名な鳥取砂丘に通っていたという。当時目に焼きつけたものが政治家としての原点、原風景になったとも。物寂しく広大な砂丘に何を見たのか。この問いに彼は「寂寞(せきばく)」と答えた。

 これにはぼくも痺れたね。豊かな教養と繊細な感性、そしてひと刷毛のかなしみが凝縮されているから。すぐさま連想したのは「我のかなしみは彼のかなしみではない」と綴った萩原朔太郎。ぼくはそれを、他者のかなしみを理解するためには自らのかなしみを常備する必要がある、と解釈している。朔太郎の言葉はさらに「(人は)いつも永久に恐ろしい孤独」と続く。石破少年は、砂丘に紋様を描きだす風の中にこの真理を見出したのでは、とはロマンチックに過ぎる想像だろうか。

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