<105>水木しげるさんはカメラを手に待ち構えていた 真剣勝負の気配を感じたんだね
雑誌『ダ・ヴィンチ』で続けている連載「裸ノ顔」、300回を超えたんだよ。
毎号、映画監督やら作家、俳優、スポーツ選手、オレの気になるヤツとか、とにかくいろんなジャンルの男を撮ってるんだけどさ、最初の頃は、「裸ノ顔」に出て欲しいって依頼すると、相手の事務所にヌードを撮るんだって勘違いされ続けていたらしい。タイトルがタイトルだし、撮るのはオレだからね(笑)。
「いや、裸になったときの顔じゃない、顔が裸なんです」って説明するんだけどさ。体のどんなパーツより顔がさらされていて、その分だけいろんな時代にメイクされてるってことに、みんな気づいてないんだなぁ。
一番の裸は顔だよ、過去も現在も顔に出る。ヌードを撮られるよりずっと怖いのに、「そういうことならお引き受けします」って言ってくれるらしい(笑)。
オレが気になる男の名前を挙げることもあれば、編集部のほうで最近話題の人間を連れてくることもある。いずれにせよ、この連載で撮った顔は、それぞれにいいもんになってると思うよ(1997年より『ダ・ヴィンチ』で「アラーキーの裸ノ顔」を連載。各界で活躍する男性のポートレートを撮影。現在のタイトルは「男─アラーキーの裸ノ顔─」。2022年10月号で連載第306回となった)。