劇団桟敷童子「海の木馬」が告発する歴史の闇に埋もれた悲劇
戦後、福岡で起きた隠匿火薬の爆発事故を描いた「飛ぶ太陽」(2021年)で新境地を開いた桟敷童子が今回は、旧日本海軍が太平洋戦争で開発した特攻兵器「震洋」部隊の悲劇をモチーフにした戦後秘史シリーズ第2弾ともいうべき作品に挑戦した。
震洋はベニヤ板製の小型モーターボートで、爆薬を積んで敵艦に体当たりする自爆兵器。
舞台は戦争末期。秘密裏に震洋隊の基地が置かれた高知県のある海辺の村。128震洋隊の青柳(小野武彦)、松浦(吉田知生)、林(前澤亮)、橘(藤澤壮嗣)の10代の隊員4人は旅館「むらかみ」に寄宿し、部隊長の武藤(原口健太郎)、艦艇長・宮野(原田大輔)の指揮のもと、出撃の日を目指して厳しい訓練に耐えていた。
「むらかみ」の主人・満吉(柴田林太郎)と妻・寿(斉藤とも子)の長男は国禁の書物を読んで非国民扱いされ、最前線に送られていた。妻のすみゑ(石村みか)は夫の汚名返上のため、勤労奉仕隊長として銃後を守る訓練に励んでいる。次女・珠子(大手忍)は兄の本を所持したため、特高の拷問に遭う。そんな珠子に青柳が魅かれていく。