春風亭昇太さん、柳家喬太郎さん…噺家という怪物に魅せられた夜
ところが、その後、昇太師匠が一席やり、トークコーナーがあってもう終わるという時に、「もう一席やる」と言い出したのだ。
そして予定外に始まったのが、なんとまた「権助魚」。しかしそれは私が適当に書いたダメ出しが生かされたメタ「権助魚」だったのだ。権助に召集令状が来たり、魚たちが自分の悲哀を愚痴ったり、はちゃめちゃな展開ながら、昇太さんはしっかり笑いを取り、しかもほぼアドリブで、狂気とも言える汗だくの大熱演で新しい「権助魚」を演じ切ったのである。
いや久しぶりに凄みのある昇太さんを見た。「軽み」のある普段からは想像できないアナーキーな一面がこの人にはあるのだ。
そして2日目は喬太郎さんだ。この日は小宮は自作の新作落語。喬太郎さんは「稽古し過ぎ」だと批判し、「30分のネタは30分で作れる」と豪語し(これも私の台本ですが)、新作をやると思わせて「私は手堅く古典で」と笑わせてネタに入った。
歌舞伎役者の話から入って、これは「中村仲蔵」というホール落語でもなかなか見られない大ネタ。小劇場でやるのか。すげぇ、と見ていたら、登場人物がすべてウルトラ兄弟という「ウルトラ仲蔵」という新作だった。