旧ジャニーズ性加害問題 SMILE-UP.から救済対象外にされた被害者たちの慟哭
性加害の最中、右側の睾丸を噛まれた
それで関係を強制されて2年、3年と歳月は流れた。体を撫でまわした手は性器をもてあそび、口淫、さらに肛門性交を強要されるようになった。いよいよ就職戦線がはじまる4年になり、「マイオフィスに入りなよ」などと言われていた頃、性加害の最中、右側の睾丸を噛まれた。あまりの痛みに声をあげ、ジャニー氏を突き飛ばして帰り、腫れと痛みで病院へ行った。副睾丸炎と診断された。大学の友人からは「絶対に捕まえておけ」「就活の免罪符になる」と言われ、葛藤に葛藤を重ねながら耐えていた結末であった。
広告代理店の夢は九州でかなえた。コネではなく、自分自身の力で。しかしジャニー氏からの連絡を絶った後も、視界をギザギザの光の波が遮る閃輝暗点、ひどい片頭痛に悩まされた。うつと診断されたこともあった。片頭痛は60代になった現在も、治っていない。
「あまりに酷い経験で、抱えきれなかったこともあり、ながく記憶を封印してきたのですが、昨年のBBC報道、平本淳也さんら当事者の会の勇気ある告発を見て、自分も声をあげることにしました。妻にも話せなかったことなのですが。トラウマ、フラッシュバック、不安、自殺も何度も考えた日々、人生を大きく狂わされた悔しさもありますが、こんなこと、絶対にあっちゃいけないと思うんです」
スマイルアップ社に訴えたが、「事実確認できない」と却下された。補償うんぬんというより、その非情な、電話すら受け付けないむげな対応に憤りを覚えているという。
この日の講演で、イェオファントン氏はこう訴えた。
「まだまだ長い道のりが被害者には残っています。補償が適切ではなく、十分ではないし、被害者との話し合いのもとに解決策が進められなければならないのに、救済策にアクセスできる環境すらない」
平本氏らと並んで、ときに目を閉じては講演を傾聴した上田氏。救済とは名ばかりのスマイルアップ社による2次被害の苦しみが、その両肩に漂っていた。
(取材・文=長昭彦/日刊ゲンダイ)
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