あの吉原の夜の揉み合いは私に戒めを与えてくれた
言論人の先達から礼状と卒寿の記念ハンカチが届いた。
連載第1回で「『田原総一朗の朝食』という動画が密かな人気を博している」と、書いた。
男が朝飯を準備して、胃に収めるシーンは、なぜか引きつけられる。男の手料理と称して中華鍋を使ったり、ドレッシングやソースを駆使してテーブルを彩る食卓を映したら、これほど人気を博すこともなかっただろう。冷蔵庫から取り出し、すぐに口に運ぶ朝食だからよかったのだ。シンプル・イズ・ベスト。
記念ハンカチをありがたく頂戴しようと思ったら、ふと、こんな光景を思い出した。
1980年5月16日。
大平内閣不信任決議可決のその日、物書き稼業の新米だった私は吉原にいた。
週刊誌の編集部デスクが、風俗取材未経験の私を吉原のソープに連れてきたのだ。初のソープ体験を終えてホッコリして浴室から出ると、廊下で店長とデスクが揉み合っていた。トラブルか?
「もう来れなくなるから、やめてください」