大腸がん<1>「検査室の異様なやりとりでがんを予感した」
■「次回に来るまでに病院を決めておいて」
この時期、カルチャースクールの講師、執筆、講演など、仕事も多忙で、また同居している病弱な父親の世話なども加わり、つい便潜血陽性が記憶から薄れていた。
翌08年11月に定例の「健康診断」を受けたとき、再び「便潜血・陽性」の結果が出た。
これといった自覚症状はなかったが、担当医のアドバイスを受けて、地元の総合病院「大野中央病院・外科」で精密検査を受診することにした。
約2時間かけて下剤を飲み干し、大腸内視鏡検査を受けていたとき、モニター画面を見ていた医師が、「アッ」と驚いた声を上げた。
直後から検査室が慌ただしくなる。医師と看護師の矢継ぎ早の会話が続いた。
「検査室の異様な事態を耳で聞きながら、私は『がんなのか』と怖さを感じる一方で、どこか冷静な自分がいました」
急きょ、大腸組織の生検を行い、やがて車椅子に乗せられてレントゲン室に移動した。腹部の撮影が終了して、1時間ほどベッドに横たわり、再び診察室に呼ばれる。担当医からこう説明された。