看取るまで家族はずっと患者の側についていなくてはダメ?
あるケースを紹介しましょう。元警備会社勤務の、直腸がんを患う57歳の男性の患者さんです。
病院から余命数カ月と宣告されたのを機に、在宅療養に切り替えました。両親やお兄さんはすでに死別。いとこはいるけど、頼らずに一人で人生の締めくくりを迎えようとされていました。
不思議な魅力がある方で、30年来通っていたスナックへ在宅医療スタッフと一緒に行ってカラオケを楽しんだり、春には桜の名所に在宅医療スタッフが車イスを押してお花見に行ったり。そんな時は、久しぶりの外出だからと洋服を通販で購入し、「おニューなんだ」とうれしそうに見せてくれたりもしました。
最後の1~2カ月になると訪問診療は2日に1回、訪問看護は毎日介入。旅立ちの時が近づいてくると、1日2回入ることもありました。亡くなる1週間前には、こちらの勧めもありいとこに連絡し再会。退院してからの1年2カ月、思い残すことなく自宅で過ごされました。
このケースで伝えたいのは、「家族が同居していなくても、その人らしい最期を自宅で迎えられる」ということ。そのような体制にもっていくのが私たち在宅医療のスタッフなのです。