疲れ目に潜む目の病気 頭痛、肩こり、イライラの原因かも

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 2カ月半続いた緊急事態宣言がようやく解除された。この間、目に異変を感じた人も多いのではないか。なかには知らぬ間に目に関係する病気を発症していたり、発症寸前になったり、病状が進んだ人もいるかもしれない。日本眼科学会の眼科専門医で「清澤眼科医院」(東京・南砂)の清澤源弘院長に話を聞いた。

「目の調子が悪いのはリモートワークやゲームなどで長時間デジタル画面を見続けたから。単なる疲れ目だろう」

 そう思っている人もいるだろうが、それは、眼精疲労かもしれない。

「眼精疲労とは、目を使い続けたとき、目の痛みや疲れなどの症状に加えて、頭痛肩こりなどの全身症状も呈するようになる状態を指します。単なる目の疲れなら休養すれば疲れを取れますが、眼精疲労では、休息や睡眠をとっても目や全身の症状は十分に回復しえない状態になっています」

 その原因はひとつでなく、目や全身の病気が関係していたり、精神的な原因で起こる場合もある。

■斜視や眼瞼下垂が原因かも

「遠視や近視、乱視、老眼といった屈折異常があるのにメガネなどで矯正されていなかったり、逆に度の強すぎるメガネをかけたことにより起きる眼精疲労を調節性眼精疲労と言います。とくに、近くを長時間見続けるなど過度の焦点の調節を強いられることで発生します。〝手元が見えづらい〟〝夕方目がぼやける〟といったスマホ老眼もそのひとつです」

 眼球を動かす筋肉の疲労に伴う眼精疲労もある。筋性眼精疲労だ。

「人は手元を見る際、寄り目にして左右の視線を合わせます。ところが、脱力した状態で左右の視線が合わない斜位や斜視の人は、普通の人以上に眼球を動かす筋肉に負担を掛けています。そのため、眼精疲労の症状が出やすいのです。また、加齢によりまぶたが下がる、老人性眼瞼下垂では無意識に前頭筋(眉から毛髪の生え際までに存在する筋肉)を使ってまぶたを上げて視線を確保しようとする。そのため少し目を使っただけで疲れや頭痛を感じます」

 左右の近視や遠視の度数差が大きい人でメガネなどで矯正している人はもともと網膜に結像した左右の大きさが異なり、それを脳で調整している。ところが、不等像性眼精疲労では長時間物を凝視していると脳で調整しきれなくなり、左右差が出て疲れてしまう。

■失明リスク高い緑内障、糖尿病性網膜症の可能性も

「もともと目が良かった人が角膜混濁、白内障、緑内障などにより、見えづらくなるのをピントの力でなんとか見ようとして起きる目の疲労が症候性眼精疲労です。このタイプの眼精疲労は慣れてくると見る努力をしなくなり、その原因疾患を自覚しなくなります」

 症候性眼精疲労の原因疾患としてとくに気をつけるべきは緑内障だ。日本における中途失明原因の第1位で患者数は約400万人。40歳以上の20人に1人の割合で発症しているとされるが、自覚していない人も多い。

「本来は眼圧が高くなることによって、視神経が障害され、見える範囲が狭くなったり、部分的に見えなくなったりする病気です。ただし眼圧が正常範囲内でも〝正常眼圧緑内障〟と呼ばれる緑内障もあります。日本人ではこのタイプが多くみられます」

 健康診断では「視神経乳頭陥凹拡大」と指摘される。

「指摘されたら、眼科でOCT(網膜断層)テストとハンフリー視野検査を受けておいてください。緑内障の進行が始まっていたら点眼薬が処方されます。また緑内障予備群と判断されると半年か1年後の再検査が指導されることが一般的です」

 最近太った、という人で目が見えづらくなった場合には、やはり中途失明リスクの高い糖尿病網膜症を疑った方がいい。

「糖尿病は血糖が高く、血液のヘモグロビンA1
cも高くなる病気です。糖尿病と診断されて5年ほど経つと、網膜の微細な血管が傷んで網膜に出血を起こし始めます。巣ごもり生活の間に糖尿病予備群だったはずが本当の糖尿病に進展して、眼底出血も増えている方もいるかもしれません」

■ドライアイも目の疲れの原因になる

「ドライアイは、目を守るのに欠かせない涙の量が不足したり、涙の質のバランスが崩れることによって涙が均等に行きわたらなくなる病気。目が乾くことで目の表面に傷を伴うことがあり、ゴロゴロした違和感を感じると訴える人も少なくありません。ドライアイはいわば涙の病気といえます。高齢化、エアコンの使用、パソコンやスマホの使用、コンタクトレンズ装用者の増加に伴い、ドライアイ患者さんも増えており、その数は2200万人ともいわれています」

■放置すれば失明も

 では眼精疲労が疑われたらどうすればいいのか。

「まずは市販の目薬をさしたり、目の周りを蒸しタオルなどで温めて血流改善をはかるなどのセルフケアを試みましょう。それで改善がみられなければ眼科専門医を受診し、原疾患に対する治療を行うことです。とくに筋性眼精疲労、調節性眼精疲労、不等像性眼精疲労の眼精疲労では両眼視が鍵であり、眼科医のもとで適正な矯正を受けることが重要です。ドライアイの治療も同じで、自覚したら眼科専門医を受診してください。治療は各種の点眼薬、温罨法で涙の出を良くする方法、そして重症例には液体コラーゲン、シリコンゴム製の涙点プラグなども行われます。いずれにせよ、放置すると、病状が進み、中途失明の可能性もありますから注意が必要です」

 なお、眼精疲労はストレスで抑うつ状態になったり、動脈硬化が進んだり、自律神経失調症や甲状腺疾患になったことで発生することもある。覚えておこう。

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