腎臓病を防ぐ尿アルブミン検査 クレアチニン値が正常でも安心できない

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 症状もなく進行する糖尿病が怖いのは、末梢神経障害、網膜症、腎症といった合併症を引き起こすこと。とりわけ、気づかずに腎症を悪化させてしまうと、人工透析を一生受けなくてはいけなくなる。慢性腎臓病(CKD)によって国内で人工透析を新規導入する患者は年間約4万人、そのうち年間約3万人が命を落としている。

 さらに、CKDがある人は、腎不全で亡くなる以前に、心筋梗塞や脳卒中、がんなど他の病気を誘発させて、死亡率が平均で4倍上がることがわかっている。特に日本で深刻なのは、透析が必要なほどにCKDを悪化させてしまうケースが非常に多いことだ。人口当たりの透析患者数は台湾に次いで世界第2位の透析大国になっている。

 いつの間にかCKDを進行させてしまう主な原因は「糖尿病」と「高血圧」、それに「肥満」も深く関わっている。しかし、これらによる腎臓病を早期に発見する検査は一般的な健康診断では測定されていない。CKDの進行を示す検査項目はないのか。「医者が教える最強の解毒術」(プレジデント社)の著者で、「AGE牧田クリニック」(東京都中央区)の牧田善二院長が言う。

「一般的な健康診断では、腎機能を知る指標として『血清クレアチニン』という項目が測定されます。しかし、たとえ血清クレアチニン値が正常であっても、実際の腎機能はとうてい正常といえないケースが多々あります。つまり、血清クレアチニン値では、腎臓病は早期発見できないのです。血清クレアチニン値が正常値(1.1㎎/デシリットル未満)を超えると、治療せずに放置していれば、たいていの人は2年以内に透析になります」

 血清クレアチニン値が6を超えると完全に手遅れで、担当の糖尿専門医もそれを知っているため「透析を受けてもらう必要があるので、それができる病院を紹介します」と告げられてしまう。

 医師がギリギリまで告げずにいるのは、自分では治せないからだ。そして、今は医学が進んで、実際にはCKDがかなり悪化しても治せるようになったことを、知らない医師がまだ多くいるという。

■「30以上」は5年で危ない

 では、CKDを早期発見するにはどうすればいいのか。牧田院長は、血糖値が高く糖尿病と診断されたら、まず担当医に頼んで「尿アルブミン」の検査を受けてもらいたいという。尿アルブミン検査は、一般の健康診断の検査項目には入っていない。医療機関によっては実施していない施設(医師が知らない)もあるという。

「一般の医師では血液検査で血清クレアチニンを調べて、値が悪いとお手上げです。一方、尿アルブミンは、腎機能が悪くなりだしたら早期から異常値を示し、その間に治療(薬物療法)を行えば治ります。しかし、日本の腎臓病の専門医は5600人ほどしかいないうえ、その多くは透析専門医です。そのため、尿アルブミン検査の重要性を知っている医師が少ないのです」

 尿アルブミン検査は、尿の中にアルブミンというタンパク質がどのくらい出ているかを調べるもの。この数値は血清クレアチニン値と違って、腎臓が弱ってきた初期の段階から変化を示す。尿アルブミンの正常値は「30未満」とされている。

 尿アルブミン値が30以上になると「微量アルブミン尿」といって、アルブミンが尿中に微量漏れ出している段階(第2期)で、CKDを発症するまでに早くても5年、平均10~15年ほどかかる。発症が早いか遅いかを分ける最大の要因は、血糖コントロール状態ではなく血圧の値。CKDの悪化を防ぐには、血糖コントロールよりも血圧を下げることが大切になる。この第2期の段階で治療に入れば、間違いなくCKDを治すことができるという。

 尿アルブミン値が300以上(第3期)になると、「顕性アルブミン尿」と呼ぶ。この段階だと一般の健康診断の尿タンパクが陽性(+)になる。つまり一般の尿検査でタンパク陽性になったら、尿アルブミン検査を積極的に受けるべきという。

「以前は、尿アルブミン値が300を超えると、治すことができませんでした。しかし、今はいい治療法があり、腎臓病治療に精通している医師なら治すことができます。私の場合は、尿アルブミン値5000までなら治すことができます」

 現在、尿アルブミン検査が行われているのは、糖尿病の外来患者全体の20%弱に過ぎないという。腎臓病を防ぐには、自分の意思ですすんで尿アルブミン検査を受けるしかないようだ。

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