腎臓<上>東北大学教授が教える「腎臓活性ストレッチ法」
腎臓は血液をろ過して不要になった老廃物をこし取り、尿として体外に排出している。また、体液の量やミネラルバランスを整え、体内環境を一定に保つのも腎臓の重要な働きだ。
この腎機能が低下する「慢性腎臓病(CKD)」の患者が、高齢化や生活様式の変化、糖尿病や高血圧の増加を背景に急増している。
ひとたびCKDと診断されると、医師から「安静第一」を強いられて近い将来に末期腎不全となり、やがて人工透析や腎移植が必要になるというのが一般的なイメージだろう。
しかし、その腎臓病の常識も百八十度転換してきている。
東北大学大学院医学系研究科・内部障害学分野の上月正博教授が言う。
「CKDは、早期に発見して適切な治療やケアを行うことで、進行を防止したり改善できる病気になりました。その大きなカギを握るのが、かつて禁忌とされてきた『運動』です。軽い運動を習慣化して行うと、クレアチニン値が低下する、尿タンパクが減少・消失する、腎機能(GFR)が向上する、人工透析を回避・先延ばしできる、など数々の顕著な効果が得られることが分かってきました。CKDに安静は禁物なのです」
東北大学病院で開発された「腎臓リハビリテーション(以下、腎臓リハビリ)」は包括プログラムで、世界各国で導入が進んでいる。そのプログラムの中心になるのが「運動療法」。心不全の患者でもできることを前提に厳選された運動なので、誰でも簡単にできる。腎臓病でない人でも生活習慣に取り入れれば、腎臓のケアになるわけだ。
ここでは中でも最も体の負担が少なく、簡単な「腎臓活性ストレッチ」の一部を紹介する。
■寝たまま肩ストレッチ
①あおむけに寝て、手足は自然に伸ばす②鼻からゆっくりと息を吸う③呼吸を止めないよう「ツー」といいながら、5秒かけて両腕を「バンザイ」するように上げる④静かに呼吸しながら、バンザイの姿勢を10秒間キープ⑤鼻からゆっくりと息を吸いながら、5秒かけて両腕を元の位置に戻す。
③~⑤を3回繰り返して1セット。
■寝たままもも裏ストレッチ
①あおむけに寝て、手足は自然に伸ばす②左足の膝を直角に立てる。右足を上げたときにグラつかないよう、足の裏を床にしっかり着ける③膝を軽く曲げながら右足を上げ、両手で太ももをつかむ。呼吸を止めないよう「ツー」といいながら、5秒かけて右膝を胸の方へ引き寄せる④静かに呼吸をして、もも裏が伸びる感覚を味わいながら、そのまま10秒キープ⑤鼻から息を吸いながら、ゆっくりと②の姿勢に戻る⑥同様に②~⑤を左足でも行う。
②~⑤を左右2回ずつ繰り返して1セット。
■寝たままお尻ストレッチ
①両足をそろえてあおむけに寝る②両足の膝を直角に立てる③呼吸を止めないように「ツー」といいながら、5秒かけて右膝をゆっくりと外側へ倒す。静かに呼吸しながら、そのまま10秒キープ④鼻から息を吸いながら、ゆっくりと②の姿勢に戻る⑤同様に②~④を左足でも行う。
②~④を2回繰り返して1セット。
■寝たまま前ももストレッチ
①うつぶせになり、両手両足を伸ばす②右膝を曲げ、右手で足先をつかんで、かかとをお尻に近づけるように引っ張る③静かに呼吸しながら、太ももの前面が伸びているのを感じる。そのまま20~30秒間キープ④ゆっくりと①の姿勢に戻る。②~③を左足でも同様に行う。
②~④を左右の足で行って1セット。
■座ったまま胸ストレッチ
①椅子に腰かける。背もたれがある椅子の場合は背もたれから背中を離し、背すじを伸ばす②両手を肩の高さまで上げ、手のひらを前に向ける③呼吸を止めないよう「ツー」といいながら、ゆっくりと5秒かけて両腕を後ろへ引く。胸が広がっているのを感じながら、静かに呼吸しつつ、そのまま20~30秒間キープ④鼻から息を吸いながら、①の姿勢に戻る。
①~④を2回繰り返して1セット。
「腎臓活性ストレッチは、どれも1セットを約1分で行うことができます。一度にすべて行う必要はなく、好きなものから週3~5回の頻度で行うといいでしょう。さらに腎臓リハビリでは、1日トータル20~60分のウオーキングを週に3~5回行うことを推奨しています。腎機能の維持や改善には、これが最も重要です。ウオーキング前には、筋肉のウオーミングアップとして必ずストレッチを行ってください」