ジェネリック医薬品を賢く使うために覚えておきたいポイント
今年3月末、「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」の製造をめぐって大規模な“不正”が発覚した。国内メーカー31社で、国が認めた手順と違う工程で製造されていたという。とはいえ、膨らむ医療費を削減するために国は価格が安いジェネリックの使用を推し進めている。今後も先発薬からジェネリックへの切り替えがさらに加速するのは間違いない。ジェネリックを安心かつ効果的に使うためにはどうすればいいのか。長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長の荒川隆之氏(感染制御認定薬剤師)に聞いた。
昨年2月、ジェネリック医薬品メーカー2社で製造上の問題や不正が発覚し、相次いで業務停止命令が出された。それを受け、日本ジェネリック製薬協会が加盟38社の製造実態について自主点検を進めたところ、31社の1157品目で製造上の問題が見つかった。
同協会は「有効性や安全性などについて新たに大きな問題が明らかになったものはない」としたうえで、外部監査などの対策を強化していく方針を打ち出したが、ジェネリックに対して不安を抱いた人も少なくないだろう。
ただでさえ、「ジェネリックは効かない」という評判がこれまでもあがっていた。患者はもちろん、医療従事者の中からも「先発薬に比べて効きが悪い」「別物と考えたほうがいい」とジェネリックを敬遠する声がある。
ただ、本当に効かないわけではない。
「ジェネリック医薬品は、先発医薬品と同じ有効成分を使っていて、同等の効能があると厚労省が認めた薬です。新薬と違って莫大な開発費用がかからないため、薬価が3~5割ほど安くなるのです。ただ、有効成分以外の原材料や添加物、製造方法が異なっているものも多く、薬剤の溶け方や効果が表れる時間が変わってしまう場合があります。そのため『効きが悪い』と感じる人がいるのは確かです。とりわけ、ジェネリックが登場したばかりの頃はそうした事例も散見されたため、効きが悪いというイメージが強く残っているのでしょう。しかし、最近のジェネリックはそうしたデメリットがかなり改善されていて、基本的には先発薬と変わらないものも増えています」
また、中には先発薬に比べて“進化”しているジェネリックもある。飲みやすさに配慮してサイズを小さくしたり、ラムネ菓子のように水なしで服用できるもの、味付けを改良して苦みをなくしたものなどの工夫が施されている。
■先発薬とまったく同じジェネリックもある
さらに、最近は「オーソライズドジェネリック(AG)」と呼ばれるジェネリックが増えているという。
「先発医薬品を製造販売しているメーカーから許諾を受け、まったく同じ作り方をしているジェネリックです。有効成分はもちろん、原材料、添加物、製造方法に加え、中には製造工場が同じものもあります。つまり、薬そのものは先発薬とまったく同じもので、パッケージや商品名だけが違うイメージです。多くの患者さんがジェネリックに切り替える状況に危機感を抱いた先発医薬品メーカーが“顧客”をつなぎ留めるため、自社の関連会社でジェネリックを製造・販売するケースが増えているのでしょう」
現時点では、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病の治療に使われる薬をはじめ、123品目がAGとして承認されている。
「日頃から“より良いジェネリック”を求めてチェックしている薬剤師はたくさんいます。効き目や効き方をはじめ、たとえば薬剤のバルク(原材料)として、どこの国のものを使っていて、どこの国から購入しているのかなどを調べ、供給面も含めてより安全に使えるものを確認しているのです。医師からジェネリックの切り替えを勧められたり、できるだけ薬代を抑えたいという人は、いま使っている先発薬のAGがあるのか、切り替えるジェネリックにはどんな特徴があるのかなど、メリットとデメリットを含めて薬剤師にたずねてみて、ジェネリックを賢く利用するといいでしょう」
いまは世界的な新型コロナウイルスのパンデミックやロシアのウクライナ侵攻などの影響で、供給に支障が出ている医薬品も少なくない。薬を選択する余裕がないケースもあるというが、今後、長くジェネリックと付き合っていくためにも、知識を蓄えておきたい。