脱腸手術は切開ではキズは3~5センチだが腹腔鏡なら3~5ミリ
現在、当院でもっとも多く行っている日帰り手術が鼠径ヘルニア(脱腸)です。足の付け根と下腹の間(鼠径部)の筋膜が弱って穴が開き、その穴から腹圧に押された腸が出っ張る病気です。手術の目的は、穴を塞ぐことになります。
かつては、糸で穴を縫って縛り、閉じる手術法しかありませんでした。しかし、この方法は再発率が高い。そこで現在は、メッシュと呼ばれる網状の医療用合成繊維で穴を塞ぐ「メッシュ法」が主流となっています。入れたメッシュは一生そのままで、取り出すことはありません。
メッシュ法のネックは、メッシュを広げて敷く十分な面積を確保するために、通常の切開手術では、太ももの付け根部分を3~5センチくらい切開する必要がある点。どうしてもキズとしては大きくなってしまい、もちろん日帰りするにしても苦痛が増えてしまいます。
では、なぜ私たちが鼠径ヘルニアの手術を日帰りでできているのか? それは、腹腔鏡で手術を行っているからです。
鼠径ヘルニアの腹腔鏡下手術(TAPP法)では、3~5ミリの穴を3カ所開け、そのうちの1つの穴から腹腔鏡を入れてカメラでお腹の中を映します。このとき、お腹は二酸化炭素のガスを入れて膨らませています。