認知症患者の「収集癖」に対する具体的な対処法は?
一方で、郵便物にこだわりを示す方もいました。不要なチラシだけでなく、重要な役所からの書類を集めて部屋のどこかに隠してしまう。書類がなくなるたびに、家族は役所に連絡しなくてはならず、対策を考えたいとの相談でした。その方は一軒家で暮らしていたので、郵便受けをもうひとつ設置し、郵便配達員には新たに作った郵便受けへの投函をお願いしました。ただ、郵便物に強いこだわりを持っている認知症の方は、郵便受けに一通も入っていないと不審に思います。家族は郵便物を確認したのち、元々の郵便受けに不要なチラシを入れ直し書類の紛失トラブルを解決しました。
こだわりから生じる収集癖の症状は長くは続きません。安全面や衛生面に問題がなければ、無理に解決しようとせず、「このままにしておいても良いのでは」と発想を転換し、うまく割り切るのもひとつの方法です。
▽杉山孝博(すぎやま・たかひろ) 1973年東京大学医学部卒業後、東大医学部付属病院で内科研修。75年に川崎幸病院に内科医として勤務し、87年からは同院にて副院長を務める。98年から川崎幸病院の外来部門を独立させた川崎幸クリニックが設立され、現在まで院長を務める。81年から公益社団法人「認知症の人と家族の会」に参加し、現在は神奈川県支部の代表を務める。著書に「マンガでわかる認知症の9大法則と1原則」など多数。