「人工透析」と言われたら…始める前に知っておきたいこと
腹膜透析は患者にとってメリットが多い
「自立していないと腹膜透析はできない」も間違い。松本医師は多数、超高齢者や多疾患併存・認知症患者に腹膜透析を実施してきているが、訪問看護の活用で、全く問題なくできている。
「腹膜透析は認知症を発症しづらい」と前述したが、それ以外のメリットは、〈表〉の通り。
「血液透析では血圧低下というリスクがあり、透析後の倦怠感が強く、帰宅後はぐったりして動けない方も珍しくありません。それらが腹膜透析ではない。血液透析ではカリウムが体内に蓄積される恐れがあるためカリウムの厳格な管理が必要で、生野菜や果物はほぼ食べられません。しかし腹膜透析では透析液にカリウムが含まれておらず、カリウム除去がしっかりできるので、カリウムの食事制限が不要。生活の質を高く保てます」
若年性認知症のある患者は血液透析のクリニックに通っていたが、針を抜いてしまう恐れがあるため鎮静作用のある薬を投与されていた。認知症が進行し、クリニックから慢性期入院での透析を勧められた段階で家族が腹膜透析という選択肢を知った。松本医師によって、血液透析から腹膜透析へ。寝ている間に透析が行われ、針を刺されることがないので終始リラックスした状態で、鎮静作用のある薬も不要になった。
「アメリカでは血液透析の患者さんに、毎年、医療側が腎移植や腹膜透析を選べない理由を説明する義務があります。残念ながら日本にはそういう制度がない。もし血液透析と言われたら、なぜ腹膜透析がダメなのか、的確な説明を求めるべき。対応してくれなければセカンドオピニオンを求めるべきです」
自分や家族の身を守るには、医師の言葉をうのみにしていてはダメだ。