日常に潜む意外な「食品窒息」リスク…消費者庁が注意喚起、現役世代も侮ってはいけない
死亡・重篤の原因でおかゆは2位。もちは?
〈表2〉は、死亡や重篤などのケースを年代別にまとめたもの。10代以下の子供や乳幼児は、たばこや洗剤、包装紙など食べてはいけないものを口に入れたことが命を危うくしている。
一方、20代以上は、詳細不明な「食物」がトップだが、原因が判明しているものでは意外にも「おかゆ類」が目立つ。窒息との関連で話題になる「もち」は60代以上の3位にランクするが、「パン」や「ご飯」「肉」などと大差がない。
20代以上の成人でも、50代以下と60代以上では事情が異なるという。
「50代以下は、大量に一気に食べたり、酩酊して吐いたものが逆流したりするなど無謀な食事が原因のことが多い。60代以上は加齢によって咀嚼力や、のみ下す力が少しずつ衰えていき、それによって本来、食道にのみ下すべき食べ物が気管に落ちてのどを詰まらせることがほとんどです」
5年前には、女性ユーチューバーがこぶし大の赤飯を一気食いする動画をライブ配信している最中に、赤飯をのどに詰まらせ、意識を失うというショッキングな事故があった。その後、女性は救急搬送先で死亡が確認されている。
こぶし大の赤飯を丸のみするのは通常では考えられないが、米はもちとともに要注意だという。
「米は粘着度が高いため、たくさん詰め込んで、よくかまずにのみ込むのは危ない。しかも、ノリが唾液を吸収してのみ込みにくくなることもあるのです。日本には、恵方巻きのように、ご飯にかぶりつく文化がありますし、丼をかき込んだり、おにぎりや寿司を早食いしたりする人は、もちと同じように要注意です」
■ブドウやミニトマトなど球状食品は盲点に
〈表3〉は、食品ごとの窒息リスクを示している。内閣府食品安全委員会が10年6月にまとめたもので、1億人がその食品を1口食べた場合、窒息事故がどれくらい起きるかを表す。ミニカップゼリーと、こんにゃく入りを別に分けているのは、08年にこんにゃくゼリーの死亡事故が発生したことを受けたものだ。
「もち」は1億人当たり7、8人でダントツ。これに続くのが子供に多い「ミニカップゼリー」や「アメ」だ。子供がのどが乾いた状態でカップゼリーを口にすると、ゼリーがのどに付着する恐れがある上、ゼリーはのどの形に合わせて付着することもできるため窒息しやすいという。それらに比べると、パン以下のリスク数値はそれほどでもないが……。
「パンはパサついているので、やっぱりのどが乾燥しているとよくありません。肉は、繊維をかみ切れないと、つまりやすい。果物や野菜はブドウやミニトマトなど球状のものが危険で、丸ごと食べたときにツルッと滑って気管に落ちることがあるのです」
そこで対策だ。
「食事の前には、お茶や水を飲んでのどを潤し、かつ米やパンなど唾液を吸いやすい食品のときは、こまめに水分を補うのが1つ。もう1つは、硬い食品やかみ切りにくい食品はやわらかく調理したり、細かく切り分けたりすること。3つ目は、よくかんで、早食いをしないことです」
前述の消防庁のデータでは、ステーキを食べた60代が肉を詰まらせて意識を失った重症例が紹介されている。60代とはいえ、食事にステーキを選ぶような元気な人でも、ちょっとした食べ方のミスで生死をさまようことになるのだ。油断しない方がいい。