「2024年問題」で実質賃金プラス転換は絶望的…連続マイナス過去最長23カ月、家計の犠牲はまだ続く
全就業者の12%に影響
6月には1人4万円の定額減税が実施される。財界は「6月ごろには実質賃金が(物価を)上回る」(経済同友会・新浪剛史代表幹事)とプラス転換に期待するが、立ちはだかるのは「2024年問題」だ。
4月から建設業や物流業は時間外労働の上限規制が強化され、大幅に残業時間を削らざるを得ない。「残業代ありき」で生計を立ててきたドライバーや建設作業員には死活問題だが、毎月勤労統計からは先取りの動きがうかがえる。2月の残業代などの所定外給与は前年同月比1%減で、昨年12月から3カ月連続のマイナスなのである。
建設業の従事者は全国で480万人、物流業は348万人(総務省・労働力調査=2月)。合わせて全就業者の約12%を占める。これだけ多くの人々の手取り収入が減れば、実質賃金に悪影響を及ぼすのは確実だ。
「企業側も残業を減らす分の労働力を新たな人材で補うしかない。人件費の総額は増えるのに、一人一人の手取りが減ってしまう悪循環です。深刻な人手不足の中、人材確保も容易ではなく、好条件を出せない企業は淘汰されるのみ。増え続ける『人手不足倒産』に拍車がかかりそうです」(斎藤満氏)
このままでは、実質賃金がプラスに転じるのは絶望的だ。家計の苦しみだけが、リーマン危機の頃から変わっていない。