皮膚におでき、イボが…麻酔下切除や病理検査に誘導する動物病院の狙い
経験を積んだ獣医師なら、10歳未満のネコちゃんやワンちゃんでかかりつけの場合、患部を目で診て、触診して、飼い主さんの話も総合することで、経験的にまったく悪いものではないと診断できることはしばしばあります。良性なら、「悪いものではありませんよ。安心してください」とハッキリと伝える方が、私はよいと思います。
もし悪性の可能性があったとしても、クリニックレベルの小規模な動物病院では病理診断医がいませんから、組織を検査機関に送って診断してもらうため、診断まで早くて4、5日。前述した悪性黒色腫のような進行の速い腫瘍では、このロスが致命傷になりかねません。この点でも、病理検査への誘導は、疑問が残ります。
では、どうするか。怪しいと判断したときは、麻酔をして1回でその部位を丸ごと切除した上で病理検査をしてもらうのが最短です。その場合、細胞の悪性度だけでなく、血管への浸潤の有無もチェックしてもらうことが欠かせません。血管への浸潤があると、遠隔転移のリスクが高くなるためです。
逆にいうと、たとえ皮膚の悪性腫瘍でも血管への浸潤がなければ、予後はそれほど悪くありません。1回での切除が早期治療に結びつき好結果を生んでいると思います。