必要のない仕事で忙しい人たち…「偽仕事」はどうして増え続けるのか?

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学校の知識がほとんど使われない

 ほかの研究では、心理学や建築学などの学位を持つ人は、学んだスキルをめったに活用しないことが示されている。そうした人たちが採用されるのは、企業が大学卒業の資格を基準として応募書類をふるいにかけるからだ。

 自社に最高の頭脳が必要であることを疑う人はいない。誰でも問題なくできる仕事でも、修士号を持つ人を募集することも多い。

 現在、知識社会と知識労働者という概念によって、教育の構造と企業の方針が決まっている。歴史上くり返し観察されてきたもの、すなわち、ほかの時間の使い途を見つける代わりに、つねに新しい仕事を発明する人類の能力である。

 知識労働者の登場によって、供給主導型の労働市場への移行がはじまったようだ。教育を受けた人が増え、産業界と政府がその働き口を見つける。かつての需要主導型の労働市場では、鍛冶屋、花屋、バス運転手、漁師が必要だったのは、斧、チューリップ、交通機関、サーモンが求められたからだ。

 他方で知識社会は、はるかに奇妙な場所である。今でもさまざまな製品やサービス(美容師、芸能人、ウェイター)は必要だが、それと同時に、高い教育を受けた膨大な数の人に仕事を見つける必要もある。そして実際に見つけている。この数十年で、誰も想像できなかったありとあらゆる新しいビジネスがそのために登場した。

 現代の労働人口のかなりの割合は、自分が実際に何をしているのかをうまく説明できない。知識社会は、数年前までまったく知られていなかったあらゆる機能やニッチを生み出してきた──ヒューマン・リソース、コミュニケーション、マーケティング、セールス、ビジネス戦略、CSR、コンプライアンス、IT、イノベーション、研究開発、サプライチェーン、アカウント・マネジメント、プロキュアメント、ラーニング・オフィサー、コンペンセーション、質保証、会計監査、ブランディング、リビジョン、シェアードサービス、プロジェクト管理、モビリティ、事業開発。

 さまざまな分野でのコンサルティング業も誕生した。チェンジ・マネジメント、リーン・マネジメント、市場拡大、学習、多様性、文化的知性、パフォーマンス・マネジメント、パーソナル・プロファイリング、採用、ヘッドハンティング。公共部門も管理、ケースワーク、質保証、認証評価などの有給ポストであふれている。

 つまり公共部門も民間も、大量の知識労働者を受け入れるために新しい仕事をたくさんこしらえてきたわけだ。いまだに仕事はたっぷりあるようだ。

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