YKK 猿丸雅之会長(1)大企業では極めて珍しい定年制度廃止に踏み切った理由
YKKは、ファスナーのトップブランドだ。ファスナーといえば、衣料などのファッション分野で馴染みが深いが、それだけではない。
宇宙服や明石海峡大橋の排水溝に採用されている水も空気も通さないファスナーなど、さまざまな用途に応じた特殊ファスナーを提供している。
海外にはいち早く進出、9年前には開発・生産拠点である富山県黒部市に本社機能の一部移転を行うなど進歩的な気質を持つ同社であるが、2021年には国内事業会社の定年制度の廃止に踏み切った。
超高齢社会を迎え、定年延長や役職定年制の廃止を決める企業は増えている。定年制度を廃止した中小企業も現れている。しかし、大企業での定年廃止は極めて珍しい。
「当社は世界72カ国・地域で事業を展開しており、その中には定年という概念がない国はたくさんあります」と、猿丸雅之(72)は語る。
仕事に対する意欲や健康状態には個人差がある。同社ではそれを一律、年齢という基軸で切っていいのかという議論を重ねてきた。定年廃止によって出てくる弊害も研究したうえでの結論だった。