今春闘は33年ぶり高水準だったが…大企業の賃金は上がっていなかった? データは語る
昨年度は賃上げ機運が高まり、大手・中小とも30年ぶりの高水準となったのだが、同調査では大手企業の賃金は前年比減少しているのだ。一方、中小企業の賃金はプラスだ。
さらに、企業規模間の賃金格差を見ると、大企業を100として中企業は前年の87から90へ、また小企業も同81.7から85へと格差は縮小している。大企業の賃金が縮小している理由を同省賃金福祉統計室の担当者に聞いた。
「調査対象に従業員数が増えた非正規社員が入っていること、また給与の上げ幅が小さい中高年の従業員が多いことが給与アップを抑えています。従って、大企業と中小企業の給与格差は縮小してきているといっていいと思います」
第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストがこう説明する。
「春闘の賃上げは企業の組合員が対象ですが実際の賃金は春闘に関係なく決まる人の影響が圧倒的に大きいんです。従って、春闘で賃上げ率が高かった大手企業の昨年の賃金は実際は下がっています。とくに30代後半から50代前半の賃金が足を引っ張っています。厚労省の調査でも小企業の方が賃金上昇率が高いため、大手と中小の賃金水準の差は縮小しているということです」
組合員数は昨年(6月時点)で前年比5万5000人減少した。また非正規従業員もこの2年急増している。春闘の賃上げ率だけが給与の実態ではないのだ。
(ジャーナリスト・木野活明)