現役に未練が…Jクラブの縁の下で支えることへのむなしさ
「白井淳GKコーチ(現京都産業大学)のもとでGKのウオーミングアップを手伝い、正守護神の荒谷弘樹(現大宮U―18GKコーチ)相手にシュートを決めるたびに『俺って結構できるじゃん』といい気になり、『むしろ自分の方が他のFWよりも活躍できるんじゃないか』とさえ思うこともあった。鳥栖と清水のテストを落ちて通訳になったはずなのに現役に未練タラタラの自分がいた」
それでも挫折の傷痕は大きく、再挑戦の意欲や野心は持てなかった。「俺はこのままでいいんだ」と言い聞かせ、何とかやり過ごそうとした。
「嘘の上塗りを無意識にする習慣がついていたんだと思います。それは大宮を06年に離れ、北沢豪さん(元日本代表MF。日本サッカー協会理事)の個人マネジャー業務を始めてからも同じだった。『北沢さんのために一生懸命頑張ろう』と頭では思うものの、どこかで『俺自身が他人に認められたい』と願っていた。実に中途半端な人間でした」
北沢氏のもとで働いた7年間でそれを痛感させられた出来事がある。2010年南アフリカW杯でのワンシーンだった。 =つづく
(取材・構成=サッカージャーナリスト・元川悦子)