「五色の虹」三浦英之著

公開日: 更新日:

 日中戦争当時、日本が満州国の首都・新京に設立した「建国大学」。五族協和のスローガンを実践する実験場かつ広告塔としてスタートしたこの大学は、日本、中国、朝鮮、モンゴル、ロシアのエリート学生が共同生活し、当時としては異例の言論の自由が保障された国策大学だった。学生同士の激しい議論により、政府が掲げる理想の国の矛盾をいちはやく見抜いた学生たちは、満州国崩壊後、過酷な運命にさらされる。本書は、各国に散らばった卒業生のその後の人生を追いかけたドキュメンタリーだ。

 大陸に抑留されていた日本人への取材をきっかけに同大学の存在を知った著者は、同大学の研究者への取材と得られた資料を手がかりにして、高齢になった卒業生を一人一人訪ねていく。日本各地を皮切りに、大連、長春、ウランバートル、ソウル、台北、アルマトイへと足を延ばし、歴史の闇に消えた記憶を掘り起こした。

 第13回開高健ノンフィクション賞受賞作品。(集英社 1700円+税)




最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    都知事選2位の石丸伸二氏に熱狂する若者たちの姿。学ばないなあ、我々は…

  2. 2

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  3. 3

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 4

    竹内涼真“完全復活”の裏に元カノ吉谷彩子の幸せな新婚生活…「ブラックペアン2」でも存在感

  5. 5

    竹内涼真の“元カノ”が本格復帰 2人をつなぐ大物Pの存在が

  1. 6

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  2. 7

    二宮和也&山田涼介「身長活かした演技」大好評…その一方で木村拓哉“サバ読み疑惑”再燃

  3. 8

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  4. 9

    小池都知事が3選早々まさかの「失職」危機…元側近・若狭勝弁護士が指摘する“刑事責任”とは

  5. 10

    岩永洋昭の「純烈」脱退は苛烈スケジュールにあり “不仲”ではないと言い切れる