広告業界のトホホと世相が楽しめる超大作
軽快に読める漫画だけに、984ページもあるとはいえ、すぐに終わるかと思いきや、まったくそうではない。ページの下部に時代背景が説明されているのだ。2001年の「吉野家値下げ」を描いた作品には「松屋が2000年に牛丼一杯390円を290円に値下げしたのを受け、吉野家も2001年8月、400円から一気に280円に値下げ。2006年に380円に上げたものの、13年には再び280円に。14年4月290円。現在は380円。」と解説がある。
こうしてこの35年間の世相を「あったあった」と振り返ることができる資料的存在にもなっている。
私は1997年に広告会社・博報堂に入社したが、配属された直後、先輩社員に「『気まぐれコンセプト』に登場する話は真実なのですか?」と聞いた。すると先輩は「80%ぐらいは当たっているな」と言うではないか。
確かに、若干大袈裟には描いているものの、広告業界のトホホな風習やクライアントからのムチャぶり、キャバクラでの男の振る舞いなどは正確に描かれていた。会社には出先表に「外」と書いてどこかへ行ってしまう社員もいるなど、同作に登場しそうな展開続きで、結局会社は4年で辞めてしまった。
★★★(選者・中川淳一郎)