「抵抗都市」佐々木譲著

公開日: 更新日:

 物語の舞台は、日露戦争に敗北してロシアの統治下になった東京。ある日、身元不明の死体が発見され、警視庁刑事課の新堂裕作と西神田署の多和田善三が捜査を開始した。ふたりは、シャツの胸ポケットに入っていたメモ書きから、被害者が文具店の外商をしている森龍平だと突き止めた。

 だが、高等警察職員の佐浦やロシア軍将校のコルネーエフ憲兵大尉が捜査に介入し始め、単なる文具商の殺害事件ではない別のにおいが漂い始める。果たして、事件の裏にはいったい何が隠されているのか――。

 79年に「鉄騎兵、跳んだ」で第55回オール読物新人賞を受賞し、以来「エトロフ発緊急電」で第3回山本周五郎賞、「廃墟に乞う」で第142回直木賞等を受賞している著者の最新作。本作は、日露戦争で日本が負けたという架空の世界で起きた殺人事件から、そこにうごめく陰謀が暴かれる歴史改変SFミステリーだ。警察小説の旗手としての手腕を存分に発揮しつつ、あり得たかもしれなかったもうひとつの東京の街の姿が描かれているのが興味深い。その豊かな発想力と、リアリティーあふれる人間ドラマに引き込まれる。

 (集英社 2000円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    岡本和真と村上宗隆のメジャー挑戦に“超逆風” 大谷バブルをブチ壊したMLB先輩野手の期待外れ

    岡本和真と村上宗隆のメジャー挑戦に“超逆風” 大谷バブルをブチ壊したMLB先輩野手の期待外れ

  2. 2
    ロッテ佐々木朗希「強硬姿勢」から一転…契約合意の全真相 球団があえて泥を被った本当の理由

    ロッテ佐々木朗希「強硬姿勢」から一転…契約合意の全真相 球団があえて泥を被った本当の理由

  3. 3
    佐々木朗希の今季終了後の「メジャー挑戦」に現実味…海を渡る条件、ロッテ側のスタンスは

    佐々木朗希の今季終了後の「メジャー挑戦」に現実味…海を渡る条件、ロッテ側のスタンスは

  4. 4
    ドトールに注がれる「石丸効果」都知事選でヒモ付き隠さず3番手から猛追、株価も爆上がり

    ドトールに注がれる「石丸効果」都知事選でヒモ付き隠さず3番手から猛追、株価も爆上がり

  5. 5
    「あぶない刑事」100万人突破で分かった…舘ひろし&柴田恭兵“昭和のスター”の凄みと刑事役の人材不足

    「あぶない刑事」100万人突破で分かった…舘ひろし&柴田恭兵“昭和のスター”の凄みと刑事役の人材不足

  1. 6
    ソフトB山川穂高「無神経ぶり」改めて露呈…31試合ぶり本塁打も身内から異論噴出

    ソフトB山川穂高「無神経ぶり」改めて露呈…31試合ぶり本塁打も身内から異論噴出

  2. 7
    石丸伸二候補に大逆風…「恫喝」訴訟で2連敗、都知事選後の国政進出シナリオも狂いが

    石丸伸二候補に大逆風…「恫喝」訴訟で2連敗、都知事選後の国政進出シナリオも狂いが

  3. 8
    蓮舫候補に一発逆転の「神風」は吹くのか…7.7都知事選「一歩リード」の小池知事を猛追

    蓮舫候補に一発逆転の「神風」は吹くのか…7.7都知事選「一歩リード」の小池知事を猛追

  4. 9
    都知事選最終盤に飛び交う「蓮舫狙い撃ち」の怪情報…永田町に出回る“石丸2位”データの真の狙い

    都知事選最終盤に飛び交う「蓮舫狙い撃ち」の怪情報…永田町に出回る“石丸2位”データの真の狙い

  5. 10
    猛チャージ石丸伸二候補に広がる危機感…広島からは「あんなぁ都知事に押し上げちゃいけん」

    猛チャージ石丸伸二候補に広がる危機感…広島からは「あんなぁ都知事に押し上げちゃいけん」