「絵師の魂 渓斎英泉」増田晶文著
文政4(1821)年、売り出し中の浮世絵師・渓斎英泉の美人画は本屋に並ぶと同時に人だかりができるほどの人気ぶり。
気をよくした英泉は、付き合いのある版元を招き、深川仲町の料亭で宴会を催す。その宴に英泉が私淑する葛飾北斎が姿を見せる。
軽輩ながら武家の嫡男として生まれ、一度は武家を継いだ英泉だが、上役とのいさかいがもとで職を追われる。3人の妹を養うために、春画を描き始めたが、売れない日々が続く中、売り込み先の版元で出会ったのが北斎だった。画力を認められ、北斎の下で絵を描くようになった英泉は、ここ最近、ようやく、美人画が売れるようになったのだ。だが、思い描く美人画にはまだ到達できない。
凄艶な美人画で江戸っ子たちをトリコにした浮世絵師の生涯を描く長編時代小説。
(草思社 1078円)