「火星に住むつもりです」村木風海著

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 地球温暖化の原因となっている温室効果ガス。中でも二酸化炭素はとくに影響が懸念されており、世界中で排出量を減らす道が模索されている。

 しかし著者は、高校2年生のときに“空気中の二酸化炭素を除湿器のような装置で吸い取ってしまえばいいのではないか?”と考えた。本書では、自由で斬新な発想で二酸化炭素にアプローチし、独立系研究機関まで設立してしまった現役東大生化学者の研究成果と温暖化防止の展望を紹介している。

 ユニークなタイトルだが、これがまさに研究の原点であるという。小学4年生のときに祖父からもらったホーキング博士の冒険小説で“火星の夕日が青いらしい”ということを知り、人類で最初にその夕日を見る人間になると決意した。しかし、火星の大気は95%が二酸化炭素で占められており、これを何とかして火星に住めるようにしたいと考えたのだという。

 こうして著者は、高校生にして本当に二酸化炭素回収装置を完成させてしまう。その名も「ひやっしー」。アルカリ性の液体が二酸化炭素を吸い取る性質を利用し、空気が通るカートリッジの中にアルカリ性の液体を含むフィルターを搭載している。この装置は総務省の支援事業にも採択され、企業や家庭に貸し出すサービスも展開している。

 さらに著者は二酸化炭素を回収するだけでなく、スピルリナという藻の光合成を利用し、二酸化炭素を糖分に変えて発酵させることでエタノールを作ったり、廃油を混ぜて軽油の代替燃料とする計画まで進行させているから驚きだ。

 中身は最先端でも、見た目は“ゆるふわ”がモットーだという著者。大人にも子供にも分かりやすく、環境問題を考えるきっかけを与えてくれる。

(光文社 1650円)

【連載】ポストコロナの道標 SDGs本

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