「竹内レッスン!からだで考える」竹内敏晴文、森洋子絵
2009年に亡くなった演出家の竹内氏は、1970年代から「竹内レッスン」という、からだとことばの独自のワークショップを続けてきた。
その合宿に参加した体験がある森氏が、「ヒトが立ち上がるということ」というレッスンの世界を絵で表現した絵本。
まずは、全ての生命の源となる太古の海をイメージ。1人が、あおむけになったもう1人の両脚を持ってにょろにょろとゆするなど、各人がそれぞれ水になってみる。さらに、海の波の下にたゆたうコンブやクラゲ、イカになって海中をゆらゆら。
そこに突然の大変化が起きる。サカナの出現だ。背骨や尾ひれ、大きなアゴなど今までの生き物にないものができる。
海中で生き物に変化が起きている間に、陸が生まれてきた。すると、サカナが陸に上がろうとする。次々と起こる進化をイメージして、それぞれがからだを変化させ、動かす。
海で誕生した生命が、魚を経て、爬虫類、両生類、哺乳類となり、ついにヒトになり、二本足で立ち上がるまでの何十億年もの時間の経過を体感するレッスン。生き物とともに変化を続ける原始の地球の景色が背景に描かれ、それぞれの進化を表現するからだの動きをイラストで紹介する。
竹内氏の娘でダンサーの米沢唯氏は、「コンブのように踊ることと、コンブそのものになって踊ることの間には、大きな大きな差」があると言う。
サカナが海から上がるときの恐怖と好奇心を感じながらからだを動かすように、「実際に『その場を生きる』ことこそ、からだで考えるということ」なのだそうだ。
からだを動かすことで「命の誕生と進化」を感じ、考えるレッスン。春休みに子どもと一緒に体験してみてはいかが。
(藤原書店 1980円)