「護符図鑑」島田裕巳著
護符とは神社や寺院で頒布される「守り札」のこと。飲食店や古い家屋の壁や柱、出入り口などに貼られているアレだ。
神や仏を写した護符は、そのものに霊力が宿っているとされ、自宅に祭ったり、持ち歩くだけで結界が張られ、あらゆる問題から心身、家、家族を守ってくれるという。
科学万能の現代にあっても、日本人の暮らしに護符が溶け込んでいるのは、疫病の流行や天災の被害を目の当たりにして、世の中「とかくままならない」ことを実感しているからかもしれない。
そんな護符の歴史や効能を解説するとともに、全国の神社や寺院の護符を紹介する図鑑。
近年、改めて注目を集める疫病よけ護符の代表格が「角大師」。各地の天台宗の寺で配られているが、その発祥は比叡山延暦寺。護符には比叡山の中興の祖・良源の異形の姿が描かれている。
護符として広く用いられてきたのが火伏せの護符だ。火伏せの護符は、全国さまざまなところで授与されているが、京都では愛宕神社の護符が広まっており、各家の台所に貼られている。
その護符に書かれた「阿多古祀符 火迺要慎」の火迺要慎は「火、すなわち慎みを要する」との意で、先人たちに、恩恵を与える半面、恐ろしい力を持つ「火」に対する注意を日々促してきた。
一方、熊野本宮大社の「熊野牛王神符」(牛王宝印)は、カマドの上に祭れば火難を免れ、門口に祭れば盗難を防ぎ、病人の床に敷けば病気が癒やされると、熊野信仰を持つ人々をあらゆる災厄から守る神符として知られる。ポップアートばりの斬新な意匠の護符も多く、見ているだけで楽しい。
そんな護符をはじめ、神社が授与する「神札」や寺院が授与する「御影札」など100札を網羅。
(ビオ・マガジン 2090円)