「JAZZ SONG BOOK」五味太郎著
NHKの連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」では、作中でジャズのスタンダードナンバー「ON THE SUNNY SIDE OF THE STREET」がたびたび登場した。久しぶりにジャズを耳にして懐かしさを感じた人や、ジャズに興味を持った人も多かったことだろう。
本書は、人気絵本作家が、誰もが知るジャズソングを自ら訳し、歌のイメージに合ったイラストを描き下ろした「音楽絵本」の復刻版。
中学時代、バンドでカントリーソングをコピーしていた著者は、アメリカの歌は勇ましくて元気な歌ばかりだと思っていたのに、訳してみると「泣いたり嘆いたり、寂しかったり切なかったり」で、他の国の歌と大して変わりないことに少し拍子抜け。それまで何をしてもかなわない相手に見えたアメリカが、けっこう情けない弱々しいところもある普通の人々の国なんだと気づいたという。
やがてジャズを聴くようになってもその思いは変わらず、ただジャズは黒人の音楽が源流ゆえに、「社会的な状況の複雑な重さ、それを敢えて越えようとする弾けた明るさ、そのあたりが歌詞にも反映」されていると語る。
その歌の心になんとか近づこうと「それぞれの歌で味わった言葉の世界をそれぞれのイメージを追ってビジュアル化」したものが本書だ。
「ON THE SUNNY SIDE──」はもちろん、ジョージ・ガーシュウィン作曲の子守歌「SUMMERTIME」や、ペギー・リーが歌い大ヒットした映画の主題歌「JOHNNY GUITAR」、多くの名だたるシンガーが歌ってきた「MISTY」まで27曲を収録。
絵本として楽しんだ後は、ぜひ音楽を聴きながら。より深く歌が心に染み入ってくることだろう。
(オークラ出版 2750円)