伝説の音楽レーベルのドキュメンタリー

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「ルードボーイ トロージャン・レコーズの物語」

 海外の音楽ドキュメンタリーが、近頃ずいぶん公開されるようになった。ミュージシャン個人の音楽や人生の話もさることながら、レコード会社とか映画の劇伴など、音楽産業にまつわるものに見るべきものが多いのが面白い。今週末封切り予定の「ルードボーイ トロージャン・レコーズの物語」は、まさにそんな音楽ドキュメンタリーの好編である。

 トロージャン・レコーズといっても知らない人は意外に多いかもしれない。1960年代末から70年代半ばの数年間、ジャマイカ発でイギリスの労働者階級の若者たちを熱狂させた音楽レーベルだ。確か数年前、好事家向けのアナログレコードのボックスセットも発売されている。その短くも濃密な歴史をたどるのがこのドキュメンタリー。

 主題にある「ルードボーイ」は本家ジャマイカの下町の不良たちのこと。その英国白人版がテディボーイだ。

 ちなみにこの「テディ」は20世紀初頭の英国王エドワード7世から来る。希代の女好きで少年時代から親を悩ませた放蕩児だが、長年の皇太子時代で養ったセンスが開花し、彼の時代に男性服が一気に派手になった。

 その趣味をストリートの不良たちが翻案したのがテディボーイというわけで、後継が日本でも人気のモッズ、それがさらに化けて丸刈りにズボン吊りのスキンヘッズになる。映画にモードの話はあまり出てこないが、インタビューに登場するかつてのルードボーイやテディボーイのたたずまいが暗に物語るのである。

 この英国若者文化については文化研究者D・ヘブディジの「サブカルチャー」(未来社 2420円)が旺盛に論じるが、あいにく版元品切れ。代わりに弟分のポール・ギルロイ「ユニオンジャックに黒はない」(月曜社 4180円)を挙げたい。現代の「黒人たちの大西洋」論の先駆的な著作である。

<生井英考>

【連載】シネマの本棚

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