「エネルギー危機の深層」原田大輔著
「エネルギー危機の深層」原田大輔著
エネルギー問題や食料自給率の低さの驚くべき実態など、ニッポンを取り巻く危機は一筋縄ではいかない。
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「エネルギー危機の深層」原田大輔著
ロシアのウクライナ侵攻でロシア産天然ガスに輸入依存してきた各国が危機に遭遇している。禁輸措置と対ロ制裁など政治的ハードルが一気に高まった。では日本はどう対応すべきなのか。それを読み解く著者は団塊ジュニア世代。インドの大学に留学後、石油公団(当時)に入団し、その後、経産省出向を経てロシアに出向するなど、日本ではトップクラスの国際派エネルギー専門家だ。
対ロ制裁と並行して米国を中心に提案・発動されたのが「プライスキャップ」(石油価格上限設定措置)。ロシアの石油収入を縮小させつつ、ロシアを利するような価格高騰も抑制し、しかも世界への石油供給は維持するというアクロバット的な措置だが、これが功を奏した。
理由のひとつは中国、インド、トルコなど親ロ友好国が軒並みロシア産を買ったからだ。これは政治的結束と思われがちだが、真相は単に価格が安いから。制裁側は制裁を長期間継続させて初めて効果が得られる策だから、当面は現状のしくみを維持した状態が続く。結果的にロシアの国力低下は明らかだという。
石油がらみの国際情勢をこれほど深く紹介しながらわかりやすく解説して類書の中でも断トツの必読文献になっている。
(筑摩書房 1012円)
「食料危機の未来年表」高橋五郎著
「食料危機の未来年表」高橋五郎著
ロシアによるウクライナへの侵攻で世界的に小麦の流通量が減っているのは周知だろう。特に日本は食料自給率38%と先進国の中でブッ千切りに低い(農水省調べ)。
輸入依存度の高いイタリアやイギリスでさえ6割を超えるというのに日本の未来は少子高齢化のほかにも難問山積なのだ。中国をはじめとするアジアの食料問題・飢餓問題を専門とする著者は、輸入が途絶えたらたちまち干上がる日本の現状を「隠れ飢餓」と呼ぶ。
しかし日本政府の危機感は薄い。最近になっていざ有事の際は「食料増産命令」が出せる法改正を検討中と報じられたが、著者はこれも「有事」の定義が曖昧すぎると批判する。
著者の試算によると日本の自給率はなんと18%なのだ! その根拠は……本書に委ねよう。
(朝日新聞出版 979円)
「日本を危機に陥れる 黒幕の正体 最新版」馬渕睦夫、松田学著
「日本を危機に陥れる 黒幕の正体 最新版」馬渕睦夫、松田学著
著者の2人はそれぞれ外務省と大蔵省(当時)の元官僚。各国の大使や衆院議員などを務めた体験もふまえ、現代日本に忍び寄る危機を忌憚なく語る。
たとえばLGBT法案を可決させたことも性的多様性に貢献などしないという。性的志向性は個人の自由に属する問題。そこに法律が介入するとかえって社会制度に差別を持ちこむことになり、LGBTの当事者を「被害者」として固定化するというのだ。
それを米大使にいわれて慌てて法制化したほか、ウクライナ問題でも米国のグローバリストの言いなりになっている岸田政権を舌鋒鋭く、完膚なきまでに批判している。
(宝島社 990円)