「女帝 小池百合子」石井妙子著/文春文庫(選者・佐高信)
「女帝 小池百合子」石井妙子著/文春文庫
「40年以上にわたって学歴を詐称してきた。国民を欺いてきた。支持者を裏切った。その卑怯、卑劣」
これは都知事の小池百合子に向かって放たれたものではない。2006年秋の「聖教新聞」で、当時、創価学会会長だった秋谷栄之助らが、創価学会を支持団体とする公明党の委員長を長く務めた竹入義勝に対して行った激しく下劣な攻撃である。
しかし、いま、小池と近い学会は彼女の学歴詐称疑惑に対して沈黙を守っている。それは大手メディアも同じで、「文芸春秋」が例外的にそれを追及している。
2020年に刊行された時は「早川玲子」と仮名で告発した北原百代は文庫化に際して著者に実名表記に切り替えてほしいと言い、「仮名だから信じられない」という批判を覆そうとした。
その北原が「文芸春秋」5月号でこう語っている。
「百合子さんがしていることは、やはり犯罪なのです。黙っていることは、その罪に加担するのと同じです」
かつて小池と同居していた北原は、まず、「朝日新聞」に配達証明郵便を送り、話を聞いてくれないかと書いたが、まったく連絡がなかったという。
これは小池だけの問題ではなく、その疑惑を追及せず、小池を批判しなかった大手メディアの問題でもある。
1976年秋、エジプトのサダト大統領夫人が娘と共に来日することになり、小池は自分を売り込んで、そのアテンド役となった。そして新聞やテレビに出たが、テレビ神奈川には元「朝日新聞」記者で中東研究家として知られた牟田口義郎が導き役として一緒に出演したらしい。
また、同年10月22日付の「産経新聞」は写真入りで小池を大きく紹介し、「エスコート役に芦屋のお嬢さん」「小池百合子さん 令嬢とは同級生 カイロ大新卒、唯一の日本女性」と見出しをつけている。
前掲の「文春」5月号では側近だった小島敏郎が、学歴詐称が騒がれた時、都議会自民党を抑えるために二階俊博に頼んで、二階や都連に「大きな借り」ができ、その結果、自民党寄りに変節していったと語っている。
とすれば、裏金疑惑の巨頭、二階と小池の関係も究明されなければならない問題となってくる。いずれにせよ、小池はもちろん、メディアも沈黙は許されない。 ★★★