「黄昏のために」北方謙三著

公開日: 更新日:

「黄昏のために」北方謙三著

 画廊の主人、吉野雄一がやってきた。私は「一応、三点だよ」と絵を見せた。吉野が「あの人形の絵、いいね。人形が生きているよ」と言うので、「一応と言ったのは、あれを売るかどうか迷っていたからさ」と答えたが、「いいさ、持っていけよ」と結局は売った。自分は命がないものをなぜ命がないように描けないのか……。

 別の日、ビニールのゴミ袋を持って家を出て、ゴミ収集所に捨てると、「行かないでよ」と声がする。「なにか言ったのか」と声をかけたが、ビニール袋には人形が収まっているだけだ。居酒屋で友人に会うと、ある画家の絵を「観に行ってみないか」と誘われ、タクシーで向かう。そこでライトアップされていたのは、人形の絵だった。(「声」)

「無機」を描こうとする画家を描く18編の短編。 (文藝春秋 1870円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人のW懸案「ポスト岡本和真&坂本勇人」を一気に解決する2つの原石 ともにパワーは超メジャー級

  2. 2

    反撃の中居正広氏に「まずやるべきこと」を指摘し共感呼ぶ…発信者の鈴木エイト氏に聞いた

  3. 3

    松本潤、櫻井翔、相葉雅紀が7月期ドラマに揃って登場「嵐」解散ライブの勢い借りて視聴率上積みへ

  4. 4

    遠山景織子 元光GENJI山本淳一との入籍・出産騒動と破局

  5. 5

    永野芽郁&田中圭の“不倫LINE”はどこから流出したか? サイバーセキュリティーの専門家が分析

  1. 6

    だから高市早苗は嫌われる…石破自民に「減税しないのはアホ」と皮肉批判で“後ろから撃つ女”の本領発揮

  2. 7

    中居正広氏vsフジテレビは法廷闘争で当事者が対峙の可能性も…紀藤正樹弁護士に聞いた

  3. 8

    ユニクロ女子陸上競技部の要職に就任 青学大・原晋監督が日刊ゲンダイに語った「野望」

  4. 9

    吉岡里帆&小芝風花の電撃移籍で様変わりした芸能プロ事情…若手女優を引きつける“お金”以外の魅力

  5. 10

    佐々木朗希が患う「インピンジメント症候群」とは? 専門家は手術の可能性にまで言及